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男性の生殖能力の変化(体外受精について)

1995年頃に話題となりました環境汚染と精子減少のことがスウェーデンのスカケベック博士の1992年に発表された50年間に「精液量は20%の減少」「精子濃度は25%減少」していたとのことで大きな波紋を呼びかけましたね。ちょうど、シーア・コルボーンの「奪われし未来(原題:Our Stolen Future)」という本が日本でもベストセラーになり、私自身も何度も読み返し「環境汚染問題」に関し様々な観点から興味を抱いていた時期でもありました。地球温暖化防止京都会議の中において決議された議定書で様々な論議が醸しだされていたのです。

29 これらの論議の根底にあるものは、地球に優しい環境にあることと考えるのが至極当然なことです。その優しい環境が失われることによって、様々な生き物の生活の場が狭められていくという現実が表れてくるのです。個々の各論をみていきながら全体的な総論を捉えていかなければならないのではないのでしょうか!

地球環境は汚染されていることは、否定できない事実といえるでしょう。生き物の生活環境は著しく狭められてきているのです。その一つの証として少子社会がわが国、日本を抱え込んでしまっている深刻な少子高齢社会現象があります。その端的な現われとして「夫婦間のセックスレス」が増えていることは、既に述べさせているところです。少子社会形成の基本といえることの崩壊の始まりではないでしょうか。反面、少子高齢社会における経済的な問題もあることでしょう。

セックスレス夫婦が増えていることについては、本ブログの冒頭で既に述べたところですね。そのセックスレスの男性側の原因としては、「仕事に疲れて」という理由でした。実際に2008年は100年以来の経済大恐慌が日本にも及んできていることは周知のところかと考えます。

2008年に行った厚労省の「全国的実態調査に基づいた人工妊娠中絶の減少に向けた包括的研究」の報告によりますと、1週間の就労時間が男性において常勤職と自営業につくもので49時間以上は51.6%と50.8%と過半数を占めております。非常勤職の週5日の40時間前後が過半数を占めております。女性では常勤職において40時間前後が70%強を占め。非常勤職では35時間未満が70%強を占めていることがわかります。30

経済情勢の悪化による常勤職者への過重労働、非常勤職者への足切現象を窺わせるものかと思われます。このような影響が男性に対し「セックスレス」や「ED(勃起障害)」に向かわしているのではないのでしょうか?

1990年代初期に問題となった精子数の減少は、様々な議論を呼びましたが、最終的には減少はしていないというところで収束を迎えたようです。でも、実際に精子数は減少しているのだろうか?興味あるところといえましょう。

2006年の第111回日本産科婦人科学会で、我われが発表したときのスライドをみてみましょう。これは乏精子症などといった男性因子の無いものを対象に体外受精を5周期以上繰返した際の男性の射出精液所見の変化について検討したものです。この調査の背景には、体外受精を繰返し行うことによって、男性はそのつどマスターベーションで新鮮な精液を取ることになりますので、精神的ストレスが加わり精液所見に影響がでてくるのではないかとの推測で検討を試みたのです。

31 精液量は全体でみますと2.6mlから2.4mlと有意に減少していました。しかし、よくみますと35歳未満群と35-39歳群には5回以上繰り返しても変化はみられませんでした。40歳代を超えると有意に減少しています。また、年代ごとにみますと年齢が高くなるにつれ有意に減少しています。精液量は年齢により少しずつ減少していくようです。年齢との関係が窺われるようです。

精子数については全体でみると11千万から10千万と有意な減少を示していますが、各年代間及び1-2回と5回以上との頻回群との間においても有意差は認めておりません。運動率も同様に変化は認められておりませんでした。しかし、奇形率は年齢及び回数が多くなるにつれ上昇していました。32

これらのことは、精子数や運動率は変化しないものの精液量と精子奇形率は加齢によってネガティブの影響がでてくることがわかりました。

このような体外受精は、どのような人が対象となり適応を受けているのでしょうか?体外受精が受けられるのは婚姻されている夫婦にのみ限られており、本療法により妊娠の成立が見込まれないものとされております。

卵管性不妊症は体外受精胚移植法に委ねるしかありませんので、絶対的適応ということになります。男性不妊、子宮内膜症、原因不明不妊、免疫性不妊などは通常の不妊治療を繰り返しても妊娠成立は困難と思われますので本法の適応となります。特に、男性不妊の場合で極度に精子が少なかったり、無精子症の場合は顕微授精の適応となります。尚、卵巣に卵子が無かったり子宮そのものに問題があれば、本法の適応とはなりませんね。

33 基本的な体外受精の実際について述べてみましょう。先ず、均一に発育した卵胞から複数の卵子を採取するために、排卵誘発剤を用います。排卵前の成熟した複数の卵胞から卵子を採取するために、経腟超音波プローブを用い卵子を吸引して取り出し、直ちに培養液に移します。運動性のある精子が多い場合には、予め前培養して受精能を持たせた精子を卵子のある培養液に入れます。これを媒精といいます。運動性が悪く精子の数が少なければ、直接、精子を卵子の中に入れて受精させる顕微下にみて授精させる顕微授精法をとります。雌雄前核を確認した受精卵を培養した胚を子宮内に移植するのが体外受精法(顕微授精法)なのです。その時に子宮内に移植されずに残った受精卵(胚)は余剰胚として凍結保存され、次回の周期に用いられるのです。34

この体外受精法で最も大切なことは、精子と卵子を体外で扱うことです。生命の源ですから、一つたりともミスは許されません。常にダブルチェックの体制でなければならないのです。

そこには精子と卵子の営みは女性の生体内で行われますので、それに似た自然環境下の条件の元で無ければ自然と遠のきます。それを外すと良い受精卵は得られず、グレードの高い胚を移植することはできません。グレードの悪い胚を移植しても着床・妊娠は望めません。そこで活躍するのが「胚培養士」なのです。

精子の処理から始まり採取された卵子の状態の観察、媒精のスキル、顕微授精の手技、胚の凍結、融解法、培養液の調整、培養状態の維持など様々なところで重要な役割を演じているのです。医師以外にも彼らの存在が、この高度生殖医療技術の発展と貢献に大きく寄与しているのです。それに加え、いかに良い卵子を得るかは、卵巣の刺激法です。均一に卵胞を発育させよい卵子を手にするかが鍵となりますので、個々人において異なりますので、卵巣の刺激法の選択も非常に重要です。

このようにして体外受精・胚移植法における高度生殖医療技術は、卵巣の刺激法の個々人に合せたあり方と胚培養士の存在によって大きく発展してきたのです。

36 次にその実際を見てみましょう。これは顕微授精ですが、非常に少ない精子の中から一つの運動性の良い精子を見つけ出し、精子の頭と尾部(尻尾)の間を押さえつけて、その動きを止めて(不動化)、精子の尻尾の方からインジェクションピペットに吸い込みます。そして卵子をホールディングピペットで固定し卵子の細胞内に精子を注入します。この手技は体外で行いますので数秒の間に行われなければなりません。

そしてその卵を受精したか否かを雌雄前核の確認で行い、女性の生殖器の中と同じような条件の培養液と温度を確保した保温器で育てていきます。体外受精した場合は、顕微鏡下でみますと卵子の周りに無数の精子が取り囲んでいます。それが数時間後には受精した卵子は、デッシュ(培養液の皿)の下に横たわっています。受精できないものは未だ精子が取り囲んで時計回りに動いているのです。

その受精した卵子をみますと精子の核と卵子の核、雌雄前核が認められます。まさに新しい生命の誕生です。37

そして細胞分裂が始まります。二つに分割して、3日目には四つに分割していきます。これらは良い胚ですので、この段階で子宮内へ移植しますが、場合によってはもう少し育てて胚盤胞まで至ってから移植します。

このような高度生殖医療技術で生まれた赤ちゃんは。2006年で19,587人です。全出生児の1.8%を占めてきております。自然の営みの中で生まれてくる赤ちゃんのうちで、わずか2%ほどですが日本の社会に貢献する役割は非常に大きなものだと考えております。

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コメント

Killzone 2 - the best PS3 game yet?Still LittleBigPlanet for me, but Sony's new shooter is mightily impressive.
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投稿: gameskillz | 2009年6月27日 (土) 23時37分

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