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2010年7月

アラフォー女の「ヌードと中絶」裏事情

サンデー毎日の8月1日号に「アラフォー女の『ヌードと中絶』裏事情」と題しての記事が掲載された。不妊に悩む女性も多い中、妊娠した40代の4割が中絶している現実。かたや、女性誌では裸のアラフォーが夫への愛を叫ぶ有り様。40女の「性態」になにが起きているのか。という小見出しで始まっている。

その記事に対してリプロ・ヘルス情報センターとして取材に応じた。2008年の人工妊娠中絶件数は242千件と報告されている。うち40代以上は18千件、10代23千件、20代108千件、30代93千件に比べ少ない。それぞれの年代の出生件数と中絶件数を合算した仮定妊娠数を母数とし、年代別の中絶率を算出した。08年では40代以上が約40%、20代の約20%、30代の約13%に比べて高いことが判明した。

そして中絶に及んだ理由、相手任せにした避妊による失敗や40代はホルモンバランスが崩れてくるので、安全日と思い込む失敗などと続く、一方男性は40~50代は勃起力が低下しコンドーム回避観念が生じてくる。夫婦間のセックスレスが見え隠れしているシナリオだ。

話題は、ここで瞬転し「脱ぐことで夫にしっぺ返し」として、40代の富裕層女性をメーンターゲットにした雑誌に女性の読者モデルが裸身をさらしているのだPhoto。と展開していくのだ。これから先は実際に記事を読んで戴き、その落とし込みに注目して戴きたい。

ここでは、各年代女性の妊娠・出産・中絶件数の実際について垣間見てみたい。先ず、5歳階級別出生件数の年次推移を示した表である。出生数100万をかろうじて死守していることがわかる。2005年から2008年の間で3%増えている。これには30歳後半と40歳以上が大きく貢献しているのだ。この背景には周知のごとく女性の晩婚化が絡んでいる。

結婚年齢が遅れることにより、必然的に早く子どもが欲しいと願う思いが女性の心に芽生える。やがてその思いが「不妊かも」という焦りにも似たものへと置き換わっていく。40歳代の出産の陰には「不妊治療」によるものも多いと聞く。

次に、人工妊娠中絶件数の年代別推移をみてみよう。Photo_2 2008年の中絶件数は冒頭にも述べたように242千件である。多いのは20歳前半、後半、そして30歳前半、後半と続いている。10歳代と40歳代は2万件前後である。

この中絶件数の総数の推移に注目されたい。1975年の総件数は672千件である。2008年の2.8倍にあたる。戦後10年目の1955年は117万件もあった。この時の出生件数は173万件である。これは「中絶天国、ニッポン!」をほうふつとさせる数値である。時代は明らかに変わってきた。

10歳代の中絶件数は、2000年45千件であったのが、2008年では23千件と半減している。これは「低用量ピル」の解禁によるところが大きい。さらには、学校教育の中で「性教育」の導入も大きな要素となって表れてきている。

最後に中絶率についてみてみよう。これは前出しPhoto_3た「出生件数と中絶件数を合算した仮定妊娠件数」として中絶件数の割合をみたものである。この数値の意味するところは、各5歳階級別で妊娠したらどれくらい中絶を余儀なくしているかを垣間見るものである。

1980年をみてみよう。40歳代女性が妊娠すると88.6%が中絶をしていたことを示している。30歳後半が67.6%、10歳代女性56.6%と続いている。この背景には、中絶する女性の殆どが「あなた任せの避妊」であり、妊娠したのである。既婚者は「健康上の問題」「経済的理由」で中絶し、未婚女性は「結婚前の妊娠」「経済的理由」が指摘されている。

2000年をみると10歳代が69.2%と最も多く、次いで40歳代63.4%と示されている。ちょうどピル解禁と重なっていた時である。10代女性の中絶が社会問題となり、リプロ・ヘルス情報センターとしても「低用量ピル」の必然性を盛んに訴えていた。それが2008年になると10歳代は59.6%と10ポイント減少しているものの6割も占めている。40歳代39.6%4割である。は20歳前半で3割を超えているが、そのほかは2割を下回ってきている。低用量ピルの普及によるものと考えている。

アラフォー女性たちは、サンデー毎日でも捉えているように時代背景の変遷とともに取り巻く環境が大きく変わってきているように思えてならない。今日の経済大恐慌が渦巻くなか男も女も40代の声を聞くとそれぞれの「危機感」がセックスレスへと走っている現実がある。我々が、全国的実態調査に基づいた人工妊娠中絶の減少に向けた包括的研究の中で報告した「第4回男女の生活と意識に関する調査」によると35歳以上の既婚女性で月に一度もセックスをしていないが45.7%もいたのである。月に1~2回というのが31.5%であり、合わせると77%においてセックスに関して良好な夫婦関係を築いているのだろうか疑問符を投げかけざるを得ない。

「人工妊娠中絶実施者に関する社会医学的研究」1・2報:日本母性衛生学会誌、第42巻2号、368-385頁および研究班報告書を参考にされたい方はお申し付けください。

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