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2010年12月

「性に関する悩み」

 

 インターネット医科大学で「女性の性と健康科」を20013月に開設していらい多くの女性から相談を受けてきました。その内容を解析して「ネット上でみる女性の性についての健康相談の現状」と題して日本母性衛生学会誌(474625632頁、2007年)にも発表してきました。これは2003年から3年間の705事例を集計解析したもので、平均年齢31.7±6.8歳と30歳代女性からよせられるものが多く、月経不順や不正性器出血等といった月経の異常に関連するような悩み相談が35.2%、年齢層が35-44歳女性で37.5%を占めておりました。次いで性感染症(STD)やセックスに関する悩み等の相談事例が多く33.3%でした。セックスに関する悩みを相談されてくるのは比較的中高年女性が多く45歳以上で40.6%も占めていました。年代の若い方は帯下の悩みやSTDに関連するようなものが多いのですが、セックスそのものに関する女性は年齢の高い方に多くみられました。

 これは実際に昨年末に寄せられた事例で印象深いものでしたので紹介してみたいと思います。50歳後半の女性からのものです。

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「独身女性です。性体験は少なく初体験も30代でした。その相手とは10年以上続きましたが、住む場所が遠く一カ月に一回程度、その時は一晩に三回が通常でした。その後、私も親の介護や仕事に追われ10数年が経ちました。先日、久々にその人と一晩過ごしました。ところが、すごく痛みを感じてしまい、しかも指一本しか入りませんでした、その後、相手から「処女膜強靭症」と言われ調べたのですが納得がいかず、更に調べましたら「性器老衰症」と言うのがあり思い当たりました。因みに閉経して3年ほどです。

相手にその事を伝えると、年齢のせいではない、昔から私は狭くいつも痛くて良かった時はなかったと言われてしまいました。今までの女の部分を全て否定されたような気がしてすごく落ち込みました。「良かった」と言ってくれた事もあるのですが、忘れたのか、嘘だったのか。

強靭症の場合、最初から本人にも痛みがあるようですが、私は今回まで一度も痛みを感じた事はありませんし、指一本しか入らないと言う事もありませんでした。生理もいたって順調でしたし、日常生活に支障を来たすような辛い思いをした事もありません。

今も健康そのもので年齢より10歳以上若くみられます。今回の件ですごく年取った気分になってしまいました。

私はもう「女」としての役目は果たせないのでしょうか?強靭症の場合、手術ともありますが、今更そこまでする気もありません。何か方法はないのでしょうか?

体より心がまいってしまっておりますので、先生のお言葉で少しでも心が晴れたらと思い、勇気を出して相談させて頂きました。

よろしくお願い申し上げます。

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 というものでした。

 その時に差し上げました内容は、以下のものです。

「処女膜強靭症」や「性器老衰症」というようなことを気にされているようですが、そのようなことは無いと考えて頂いて宜しいかと思います。

しかも、閉経が3年ほど前ということであれば、そして、「生理もいたって順調でしたし、日常生活に支障を来たすような辛い思いをした事もありません」ということを考えましたら、女性として、充分に素晴らしい機能をもたれていたと考えます。内分泌学的にみてからみても全く問題はないかと指摘することができます。

それが、「今も健康そのもので年齢より10歳以上も若くみられます」というお言葉に繋がっているのでしょうではないかと思いますよ。女性として輝いておられ、とても素晴らしいことではないでしょうか。

今回のご相談事として「先日、久々にその人と一晩過ごしました。ところが、すごく痛みを感じてしまい、しかも指一本しか入りませんでした」ということですが、それは、その時のパートナーの性的営みに問題があったのではないでしょうか?

以前からも性的営みができていたのであれば、ご本人のお身体には、なんら問題はないと思います。

パートナーの年齢がわかりませんが、「性の営み」を、早急的に考えて一方的になり過ぎていたのではないでしょうか?

お互いが年齢を増すことによって、「性の営み」は、若いときに比べ時間が必要となります。挿入、そして射精というような簡単な営みであってはならないのです。充分に時間をかけて、そのひと時をお互いが楽しみ合えるような余裕を持った「性の営み」を持つことが大切なのです。

特に、女性は、「性の営み」という悦びに繋がる重みを感じるのは年齢が重なることによって、ひとしお強くなるもので余韻も深く長くなるものです。男性が射精時に感じる単純なものとは大いに異なるもので、心からお互いに性を慈しみ感じあう深遠なものに変えていかなければならないのです。スローセックスとでもいわれているようですね。

先ずは、「指一本しか入りません」ということより、指が自ずと入るようになるまで潤いを感じることです。「性の営み」は、鏡像効果(ミラーリング)といって、相手(パートナー)の反応をもってお互いの愛情を確かめ合うのです。

それが、お互いの絆を深め合う「連帯の性」であり、お互いが喜び合えれば「快楽の性」となり、「生殖の性」という3原則が生まれるのです。たとえ「生殖の性」が終わったにしても、「連帯の性」と「快楽の性」を営み続けるのが大切なことで、男女ともに更年期という波乱の時期を上手に乗り越えて実りある豊かなQOLを送ることになると考えます。

男性は、挿入、射精といった単純なセックスとしか捉えられないようでは困りますね。奥の深いものとしてお互いが慈しみ楽しみあう快楽の性という大人の営みに代えていかなければならないと考えます。そうしていかないと男性のED(勃起障害)はもとより、セックスレスは増え続けていくのではないでしょうか。

一方的な「性の営み」にならないようにお互いが、そのときを大切なことと考えてくださいね。

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この度は沢山の相談がある中、ご丁寧なご回答ありがとうございました。的確なだけでなく、お優しいお言葉に力を頂きました。

先生がおっしゃるように自分の健康と若さを誇りに思って、明るく生きていきたいと思います。

お返事を頂きました時刻が午前3時をまわっているのを見て、申し訳ない気持ちになりました。

日に日に寒さが厳しくなってまいります。「医者の無養生」になりませんようくれぐれもお体ご自愛くださいませ。

本当にありがとうございました。

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というお返事が返ってきました。

また、この内容は、先日のサンデー毎日の「セックス再開法」という取材に応じたときに思い起された事例でした。

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