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実態調査からみる『高齢者の性』

5.実態調査からみる「高齢者の性」

高齢者の性を取り上げた調査は数少ないようです。実験的に試みられた最初の調査は、1973年に大工原秀子氏の社会学的研究と思われます。この調査は、北海道の苫小牧市と奈井江町、東京都板橋区、愛知県一宮市の4つの地域で、老人クラブの会員で60歳以上の在宅老人を対象として行われたものです。この時期は丁度「高齢化社会」と呼ばれ始めたときでもありました。11


大工原氏は12年後の1985年に同様の調査を行っており、「高齢化社会」という深刻な問題として取り上げられた時期でもありました。この二つの時代背景からどのような変化が起きているのかを紐解いてみたいと考えます。

二つの調査の対象者の背景をみますと、男女共に60歳以上の有配偶率が高くなってきています。男性では7ポイント、女性で13ポイントも上昇しています。更に、年齢区分でみますと60歳代が男性で4ポイント、女性14ポイント上昇しておりやや60歳代が増えているということを念頭に入れておきたいところです。

5-1.高齢者の性機能

高齢者の性機能について問いかけています。男性の勃起能は60歳後半でも有ると答えているのが、1973年では75%、85年では83%と増えています。70歳前半でも76%と8割近くが勃起能を維持しているのです。性的能力は十分にあると云えます。12


女性の腟の潤滑についてみますと85年では60歳後半で濡れると答えているのが36%でした。70歳前半女性も28%が答えています。3割弱の女性が自力で受け入れることが可能だと云えます。だからと言って男性を受け入れるには少々リスクがあります。

なぜなら、高齢女性の腟壁は菲薄となり伸展性も少なくなっています。腟内も潤っていると云えども充分ではありません。高齢男性も勃起はしているとはいっても硬さも充分ではありません。腟内が十分に潤うためのサポートが不可欠です。そのためには様々な工夫が必要となります。

5-2.高齢女性は「性に目覚めている」

大工原氏の調査によりますと、1973年の調査によりますと女性の「性の営み」があるものは、年数回を含めましても44%にしか過ぎませんでした。それが12年後の調査では93%となっています。しかも月一回以上が56%と半数以上にもなってきています。13


性に対する意識が変わってきているのです。頻度は男性と異なってはいるものの対等となってきています。

初回の行われた調査は「高齢化社会」を迎えた時代であり、女性の大学進学率が急上昇し、女性解放運動が盛んに始めたときでもあり、女性の社会進出の兆しでもあったときといえましょう。

また、1985年に行われた2回目の調査の頃は、「女性差別撤廃条約」に基づき「勤労婦人福祉法」は抜本的に改正され「男女雇用機会均等法」が制定されたときでもあり女性の社会進出が多様化し始めていた頃でもありました。女性の多くの意識が大きく変わってきた頃といえましょう。

「性意識」も変化してきたようです。この時代において、男性は両調査においても大きな違いはみられていませんが、女性において大きな違いがみられています。両調査では、女性の4人に1人が「性」を謳歌していましたが、性の営みは男女対等になり始めてきたのです。14


さらに、2012年に行われたジェクス社の「セックス調査」では明確に対等になってきているのです。50歳から69歳までの中高年男女のセックスを月1回以上ある者の割合を2歳階級毎にみてみました。60歳を過ぎても男女とも5074%の割合でセックスが営まれています。「対等な性の営み」となってきているようです。

超高齢社会のなかにいる私たちは、今や「老人の性」ではなく、「高齢者の性」として新たな展開をもたらしてきています。

 

5-3.閉経後女性のセックス・スタイルの変容

閉経周辺(更年期)のセックス・スタイルが変化してきているのです。更年期に入りますと卵巣の機能が低下し始めエストロゲンの分泌が少なくなると前項で説明しました。エストロゲン減少のもたらす影響として、腟壁の潤いは少なくなってきます。腟壁もしだいに菲薄となり伸展性も乏しくなっていきます。まして、この時期には様々な不定愁訴に悩まれ更年期障害を抱え込んでいる女性も多くみられます。セックスなんて考えられるのでしょうか?

でも今では6869歳の女性でも6割が月1回以上のセックスを営んでいます。なぜでしょう?セックスのスタイルが変わってきているのです。

 1960年は65歳以上の男性では7割が妻と共に生活をしていますが、女性からみますと7割が未亡人となっていました。老齢の性は「厭らしいもの」、「汚らしいもの」として「閉ざされた性」となっていました。

② 2010年になりますと未亡人は4割と大幅に少なくなってきました。夫婦共に生活している時代になってきたのです。性の営みがかかわってきているのです。

 そこには性交そのものが欲求であることの多い男性も様変わりしてきました。確かに勃起する5060歳男性はいますが、その硬さは失われていることが多いのです。充分なまでの腟の潤いがないと挿入は難しくなっていることが多いのです。

 射出される精液量も少なくなり、射精時の極致感も弱くなっています。射精が必ずしも「性交」につきものではなくなってきているようです。

 この年代の女性は二人の関係性の中で、『愛されている実感』を希求しているのです。「受け入れる性」そのものが大切なのです。「繋がっている性」で満ち足りているのです。

 高齢男性も「繋がった性」で充足しているのです。

 頻度ではなく、月に一度「繋がる性」で、お互いが幸せ感にあふれているのです。

その証として「女性が感じるオーガスム」があります。オーガスムをよく感じる女性の割合を年代別にみますと図のようになります。年齢が増すにつれ、その割合が増えているのです。60歳代では5割弱となっています。それもマスターベーション(MB)ではなくセックスによるものが8割弱となっています。確かに女性の感じやすい部位として「クリトリス」が挙げられますが、高齢になってきますと腟内でも十分に感じ取れるようになっています。15


このようにして「高齢者の性」はセックススタイルも、若いときの荒々しいセックスよりも、確りと「繋がる性」を男性も女性も求め合うようになってきているのです。歓びの性を得た女性は、男性と対等となり性の営みは永続していくと考えられます。

60歳代では半数近くの女性が「オーガスム」を感じ取っています。オーガスムの項でも述べましたように、腟内の潤滑度は当然のことながら増します。骨盤底筋群は活発な攣縮運動を繰り返します。骨盤腔の血流も盛んになります。全身の血流も良くなっていきます。歓びを感じているのですから脳内の「オキシトシン」の分泌も盛んになっています。光り輝いているのです。

5-4.セックスには健康効果がある

「荒々しい性」から「繋がる性」に変化してきたセックススタイルには高齢者にとって様々な健康効果が表れてきます。

 お互いが裸で触れ合うことは、お互いの脳内には「オキシトシン」が駆け巡っています。相互信頼が増す愛着行動のホルモンです。

 お互いが歓びを分かち合うことにより脳内麻薬といわれるドーパミンも駆け巡り合います。快感・快楽の神経伝達物質です。全身に若さが漲ります。

 適度の運動となり骨盤腔の血流が増し全身の血流も改善されてきます。心循環器系のバランスも改善され、血圧も安定すると云われています。

 事後の睡眠は深く取れるようになりストレスの解消にも繋がるでしょう。至福の営みが朝の目覚めを爽やかにしてくれます。

 オーガスムを感じる女性は膀胱括約筋や骨盤底筋群の攣縮にもつながり、筋力の活性化がみられ尿失禁といった悩みも解消されてくるでしょう。

 男性にとって射精が繰り返されるなら前立腺の肥大やがんなどといった問題も改善されてくると云われています。

 性の営みは、お互いの絆、すなわち会話がスムーズにとれるようになってきます。お互いのコミュニケーションがとれ生活に張りが出てきます。

信頼のホルモン「オキシトシン」の役割を大切に生かしていくことがこれからの生活を豊かで実りあるものにしてくれるものと考えます。

5-5.サイトを賑わしている『高齢者の婚活』

最近、注目されているものに高齢者男性の婚活があります。婚活といえば30~40歳代の年齢層の女性というイメージが浮かんできますが、男性も盛んに婚活の場を求めようとしてきているようです。草食系男子が増えてきたという話題性から、若者たちの出会いの場のイメージが強いのですが、最近では60~70歳代の独身男女も積極的に参加しているようです。そのようなサイトでも楽天が運営する「オーネット」やライブドアが運営する「ユーブライド」等では高齢者もターゲットにしているようです。

「老春の門」でもありましたように1980年代頃から高齢者のペアリングの世話が盛んに行われるようになってきました。

そして新たな第二の人生とでもいうのでしょうか、50歳以降で再婚するケースも増えてきています。2012年では男性20.7千件と42年前に比べ2.8倍増となっています。初婚は6.1倍増の2.2千件です。女性も同様に5.1倍増の12千件となり、初婚も1.7千件となっていました。この数値は総婚姻件数に占める割合は男性で4.6%、女性2.4%と少ないもののかなり増えてきているといえます。16


一方では、別れもあります。2012年の総婚姻件数は553,040件でしたが、この年の総離婚件数は170,738件でした。総婚姻に対して30.8%の割合でした。しかし、50歳以上でみますと男性35,866件で1970年に比べ10.1倍増、女性22,74712.3倍増となっていたのです。熟年離婚の急増です。しかも離婚の申し立ては圧倒的に女性からのものです。より良い伴侶を求めて…との思いからでしょうか!17


いずれにしましても、高齢社会のなかで重要なことは、老後を夫婦ともに、そして生き甲斐のある生活を送ることが大切なことではないでしょうか。

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コメント

今年で66歳になりますが、2年前から始めたウォーキングの効果か、以前だと月に2回ぐらいの射精だったのが今では週2~3回は出来ます。お陰様で残尿感はなくなりましたし、尿漏れありません。個人差はあると思いますが歩くことで血の循環がよくなったのでしょうね!(^^)!年齢とともに若い頃の面影が消えていく中で、勃起した陰茎を見ていると気力が漲ってきます。

投稿: 山田勉 | 2015年3月15日 (日) 16時59分

山田勉様
コメントありがとうございます。確かに血流の改善は様々な健康効果をもたらします。陰茎の中には最も細い毛細血管で構成されています。加齢とともに早朝勃起が失われていくのも当然のことかもしれませんが、血流を促すことをされるのであれば、老化は抑えられていくでしょうね。『年齢とともに若い頃の面影が消えていく中で、勃起した陰茎を見ていると気力が漲ってきます』、若さを保ち続ける秘訣ですよね。。

投稿: 菅 睦雄 | 2015年3月17日 (火) 18時03分

66歳です、週に二回は射精しています。毎日は無理と思う今日この頃です。若い頃は連日でした。その頃に比べると頻度は少ないですが、充実感は有ります。何と言っても挿入の時のあの瞬間の感覚はイイ感じで常に気持ち良いものです。その後の射精に二人して充実を覚えます。射精後の始末も嫌がらずにしてくれます。超スッキリとした感覚は別格です。週二回、末永く続くことを二人で笑いながらも確認している今日この頃です。でも、いつまで続けられるのか、腹上死ありかも。

投稿: | 2015年7月 3日 (金) 03時45分

66歳です、週に二回は射精しています。毎日は無理と思う今日この頃です。若い頃は連日でした。その頃に比べると頻度は少ないですが、充実感は有ります。何と言っても挿入の時のあの瞬間の感覚はイイ感じで常に気持ち良いものです。その後の射精に二人して充実を覚えます。射精後の始末も嫌がらずにしてくれます。超スッキリとした感覚は別格です。週二回、末永く続くことを二人で笑いながらも確認している今日この頃です。でも、いつまで続けられるのか、腹上死ありかも。

投稿: | 2015年7月14日 (火) 02時43分

前立腺肥大と診断され、その後癌の兆候があるとのことで注射と飲み薬で治療していました。82才になり前立腺治療を止めたところ、3ヶ月前から朝立ちを経験するようになりました。
 パートナーが長期療養をしていましたので、20年以上もセックスレスの生活でした。パートナーが死亡してからの勃起では、何とも情けない思いです。
 今さらパートナーを求める年令ではありませんが、男に戻った気分は悪くありません!朝立ちを経験して以後の体調は良く、気分も快調です。高齢者とはいえ、これからも希望を持って生活しようと思って居ます!

投稿: 夢見る老人 | 2015年8月28日 (金) 12時11分

私74妻73歳 二人だけの生活の為、昼でも夜でも
SEXできますリビングでベットでも又たまにはラブホテルで楽しく行ってます妻の要望で固くするためにバイアグを使ってます、妻が取り残されたときはロターバイブを使って楽しんでます二人とも健康な間は続けようねと、最近はカレンダーに次はいつしようかと予定も書き込んでます、もちろん妻からも書き込みが有り月に4~5回のペースかな仲良し夫婦です

投稿: 仲良し夫婦 | 2015年9月28日 (月) 05時25分

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